シェルポ直販ブックボックス直販

開発の裏話

発明家は、アイデア勝負。グッドアイデアを考え付けば、メーカーがこぞって商品化してくれるだろう。。。
私だけでなく、多くの発明家のスタートラインはこのあたりだと思います。
ところが、実際は、期待に反して、企業による商品採用のハードルは高く険しく、、、
しかも、仮にメーカーから商品化されたとしても、それはヒットする保証にもならず、現に大手メーカーの新商品でも、泣かず飛ばずの商品はたくさん有ります。

そこで、この際、自信のあるアイデアを自分で商品化して、自分で売ってしまおう!!
というスタンスで、2000年から活動を始めました。

こうなれば、売れても、売れなくても、ぜーんぶ自分の責任。
アイデアは、自分の子供のようなもの。生むだけじゃなくて、いかに育てて、お客さんに嫁がせるか、、、
自分で作ることで、商品の隅々まで自分の分身となり、自分で売ることにより、今何が求められていて、この商品に何が足りないのか、が判る。 
そして。。。
全部を自分でやってみることで、分業化が当たり前の社会の中では普通は見えない、イロイロなことも見えてきます。

やってみなくちゃ、判らない。やらずに後悔したくない。
では、、、現在までの試行錯誤の足跡を、ズラズラと書いてみましょう。
■01 ■最初の商品
最初に商品化するものを何にするか。。。これは迷いました。
まず、
@ パっと見てインパクトが有り、覚えて貰いやすい。
A 従来の品と比べて、明確な利点があり、それが判りやすい。
B マーケットが大きい。
C 小売価格が1000円位まで。
D 真似されにくい工夫がある。
E 怪我や、事故の原因にならない分野
こんな制約の中で選んだのが、フィルムを蛇腹に折り畳みハンドル部分をカバーするハンドルサンシェードでした。
私は、車の免許を持っていないのですが、女房が「夏場は停めた車のハンドルが熱くて持てないよ〜」てぼやいてたのと、ちょうどその頃、伸縮する蛇腹型の温室の試作を考えていて、頭の中で二つがドッキングしたっていう感じでした。
■02■ハードル-1 蛇腹のカタチ 
最初のハードルは、試作して直ぐに判明。
イメージしていた蛇腹を紙で作り、ハンドルに巻きつけてみると、、、コの字型の蛇腹がだんだん開いて平らになってしまう!!これは、致命的な問題です。
これを解決したアイデアは、(どうして思いついたかは思い出せないんだけど、、、)二つを組み合わせる、という概念でした。
つまり、、、「伸ばすに従って、どんどん開く」というカタチが有るなら、「伸ばすに従ってどんどん閉じる」というカタチも有るはずで、この二つのカタチが繋がれば、互いに相殺して、伸び縮みに関係なく、角度が変わらない蛇腹ができるはずだ。。。
ということです。
後は、試行錯誤で、紙を折り曲げていると、自然に現在の折り曲げ線に辿りつきました。
■03■ハードル-2 蛇腹を作る
蛇腹のカタチに、特許性も有りそうで上々の滑り出し。。。次に、この蛇腹を折り曲げる為の方策を考えました。
まず、国内の蛇腹メーカーや、プリーツ加工メーカーをピックアップして、加工の可否と見積もりを聞いてみました。
その結果、蛇腹メーカーはどこも製作不可能。プリーツ加工のメーカー数社ががかろうじて単純な直角蛇腹であれば、トライしてみる、との回答で、見積りは(1万個注文しても)、少なくとも1000円。。。予想していた通りの結果に、ややニンマリ。
なぜ、ニンマリかというと、、、、誰かが真似しようとしても、このコストでは引き合わないからです。
■04■ハードル-3 蛇腹を作る機械を作る
私の作戦は、ハンドルカバー専用の蛇腹の折り曲げ装置を作ってしまおう。というものでした。
とは言っても、全くこの分野の知識や経験が無く、一からの取り組みでしたがナゼか、「絶対何とかなる」って思ってました。
(25歳から30歳の間、自動で動く産業用ロボットを製作する会社で様々な機械の設計をしたことが、唯一の自信でした。)
折り曲げ装置の製作は、予想通り苦労したのですが、約半年で完成。出来上がった装置は、作業部屋のスペースの大半を占めて、10数年後の今でもその場所にあります。人がいなくても自動でどんどんと蛇腹が折り曲げられる、、、という最初の目標は達成できず、作業時には私が付きっきりになり、ヘアドライヤー3本が組み込まれた装置を稼動させると、みるみる室温が上昇して、汗だくになりながら蛇腹を折り曲げています。この折り曲げ装置は、後々も活躍することになり、とても意味のあるハードルとなりました。
■05■ハードル-4 蛇腹の素材
次のハードルは、蛇腹の素材でした。
実はあまり深く考えておらず、塩ビのフィルムやPP(ポリプロピレン)で試作してました。加工性も非常に良くて、生産の効率もよく、どんどん蛇腹が出来上がります。
しかし、、、この時期は春でした。実際に使用するのは夏です。
夏が近づくにつれて、車内の温度があがり、しっかり入っていた蛇腹の折り曲げ線が熱により戻ってしまったのです。
そして、ある日、テストしている車に行くと、だらしなくダラーンと蛇腹が伸びきってハンドルから垂れ下がったハンドルカバーが!!当然ながら、蛇腹を畳もうとしても、折り目が鈍っているので綺麗に畳めません。
塩ビもPPもダメ。紙は厚くて嵩張るし、薄くすると腰が無くて、破れやすいし。。。思わぬ落とし穴でした。
最後に試したのはポリエステルフィルム。このフィルムは、加工温度が高く、蛇腹の折り曲げ装置に加熱ファンを取り付け、最終的に溶着ギリギリの温度で加熱プレスする工程を加えて、なんとか蛇腹に加工することができました。
そして、このポリエステル蛇腹は、見事に夏場の車内の温度を乗り切ることができたのでした。
(実は、小学生の頃、東レに勤めていた父親がこのキラキラ反射するルミラーというフィルムを家に持って帰ってきて、このフィルムで何か新商品を考えてなきゃいけないんだ。。って言ってた。後で調べるとこれが日本初のポリエステルフィルムでした)
■06■ハードル-5 金型代は高い
次のハードルは外側のケース。樹脂成型の金型は非常に高価で、金銭的なハードルが立ちふさがりました。
設計は、方眼紙に手書きで行い、大阪を中心に10社近く見積もりをとりました。一番高かったのは400万円。一番安価で協力的だった会社にお願いしました。それでも、約100万円。この会社の社長は、ご自身も発明家で色々なアイデアグッズを試作していて、私の商品にも興味を持ってくれてとても親切にしてくれ、今でも付き合いが続いてます。
このハンドルカバーの利点は、コンパクトに収納できる。の一言です。ケースもギリギリの薄さに設計しました。

こうして完成に近づいたハンドルカバーですが、名前がハンドルカバーでは、なんとも味気ない。ジャバラでま〜るいカタチだから、じゃばまる JAVAまる と名付けました。インターネットで検索されることを考えると、どこにも無いネーミングにすることも、とても重要でした。パッケージも多くの方に協力してもらい完成し、ようやく販売できる状態になりました。

■07■特許の話
ジャバマルの蛇腹部分と、全体の構成は国内特許を出願しました。全文自分で書きますから費用は印紙代の16000円だけです。しかし車社会の先進国は、何といってもアメリカ。個人主義の国なので、日本同様に個人が弁理士事務所を通さずに直接米国特許庁(USPTO)に出願できるかもしれない。。と思い、色々調べてみると、どうやら可能なようなので挑戦してみることにしました。ごく簡単に説明すると、日本の弁理士に相当する仕事を、代理人が行います。(代理人には3種類のグレードがあり、やることは同じなのに明確に報酬に差が有ります。)しかし、日本同様これらの代理人を通さなくても個人の資格で直接出願できるのです。そして、出願は、外国から、外国人がダイレクトに行うこともできるのでした。
ちなみに、極普通に、日本の会社が米国に特許を出そうとすると、 会社⇒日本の●●国際特許事務所⇒米国の代理人⇒米国特許庁 という流れになり、1件で、最低150万円〜200万円程度の費用がかかります。
近所の技術翻訳士の人に明細書の翻訳を頼み(20ページ程度でしたが思いっきり値切って4万円)、英語の堪能な友人に頼んで米国特許庁に直接電話して出願の方法を確認し、明細書と印紙に相当する為替を添付して国際郵便で送りました。
出願費用は、個人または中小企業の場合、半額となる制度があり、確か400ドル程度でした。米国の場合、出願=審査となるので、審査請求費用もこの中に含まれると考えると、現行の日本の制度よりも割安かもしれません。(データは2000年頃のもので、現在は、個人だと米国出願費用は75パーセントOFF。日本では、低所得者減免制度ができています。)
約、1年?ほど経過して、米国特許庁から書類が届き、審査の結果類似品が見つかったとの内容で、意義があれば連絡してください。とのことでした。内容は、扇子のようなブレードをハンドルに被せるという構造で、違いは明白なのですが、、、この頃には、シェルポ(CDケース)への転進を決めていたこともあり、もう深追いするつもりにはなれませんでした。
※米国出願に関するお問い合わせには、一切ご助言できませんので悪しからず。尚、日本の特許庁の方にも色々アドバイスをいただくことができましたが、日本の特許事務所で、日本人が個人の資格で直接米国特許庁に特許申請できる、ということを知っている人は殆どいませんでした。まあ、そんなことする人は、殆どいないんでしょうね。

■08■販売開始
さて、話は戻って、、、2000年冬から春にかけて、数千個を製作し売り込み開始。。。
2001年4月、友人の車の助手席に乗り、地図を片手に国道1号線を東へ。。。滋賀、三重、岐阜、愛知と関西地区を横断して、事前にリストアップした、独立系のカーショップとタイヤ館を中心に、飛び込みで営業。
慣れない営業が、ういういしかったのか、結構みなさん親切な人が多くて、「わざわざ商品持って、一軒ずつショップ回ってるの??大変だねえ!!」 ていうのが、一番多い反応。そんな理由でか、商品は7割以上のお店が置いてくれました。しかし、依託販売なので、お客さんが実際にどのくらい購入して貰えるか??そこが最大のポイントです。
この他、東急ハンズも個別に回って札幌以外全店仕入れてもらえました。また、オートバックスの社長室から電話があり、社長が雑誌でジャバマルを見かけて、是非これを仕入れろ って命令ですので、来てください。というありがたい話も有りました。
そう、2001年の春は、ジャバマル元年、結構色々な雑誌に記事として載っていたのです。
■09■テレビや雑誌で…
テレビ、雑誌にも新製品の情報としてサンプルを送り、幾つもの雑誌やテレビ放送で商品を取り上げてもらうことができました。

私自身も出演する可能性があったのは、笑っていいとも、の「福耳さんのコーナー」だったと思います。金持ちは本当に福耳か、??確かめる、というコーナーで(毎週いろんなジャンルの金持ちが出てたみたい)、、、発明⇒大儲け⇒福耳ということで、関西の発明家4人と新商売屋さん等計7人がフジテレビから(勝手に)選ばれて、新宿アルタに現地集合。放送当日に簡単なリハーサルが有って、その場で、この中から出られるのは、2〜3人だけです。と言われました。大恥覚悟で東京まで出てきたけど、そうなると、恥かいてでも宣伝したい気持ちと、ピエロ扱いされるのは嫌だなあ。。。という気持ちと半分半分でした。
私ともう1人の神戸の女性は真面目な発明?。大阪のおばさんは、その道でちょっと有名な発明家兼発明プロデューサー(いかにも大阪のおばちゃんで、押しがめっぽう強い)、もう1人は高槻のおじさんで、こちらも珍発明家としてちょっと有名な人。
さて、、、各自発明品を披露した結果、発明家軍団からは高槻のおじさんに決定。つまり、東京まで来てリハーサルだけして終わり。という残念な結果となりました。
高槻のおじさん、六車さんという方で、今回の出し物は、「走る座布団」!!ネーミングだけじゃなくて品物もぶっ飛んでます。左右に分割する座布団は、それぞれに台車がついていて、台車のキャスターに、仕掛けがしてあり、その座布団(台車)に座って、左右の膝から下を正座したまま開いたり閉じたりすると、、ズンズン前に進むんです。これには僕らも大笑いでした。そして、笑いの中でも、クスリともしない六車さんに珍発明家の真髄を見たのでした。
放送終了後、全員、交通費と宿泊代と粗品のストラップ1本を受け取りましたが、大阪のおばちゃんは、「え〜。わざわざ着たのに、もっと粗品ちょうだいな〜。なあ頼むわあ」とおねだり。スタッフも手馴れた感じで無理なんです〜と対応してました。
数年後?から番組内で、クイズに正解したゲストへの商品として、このたもさんストラップが渡されるようになって、ぐんぐん値打ちが上がり、オークションでは、一時期2万円程度で落札されることも有ったみたいです。食べていけなくなったら、売ろうと思ってたけど、、、まだ、何とか手元に有ります。
■10■そして、現実は…
そんなこんなで、やるだけやった。宣伝広告には1円も使わなかったけど、商品力さえあれば、焚き火が燃え広がるのと同じで反響は有るだろう。さてどの程度、追加の注文が来るか・・・
しかし、、、その年の追加注文は、予想以上に少なかったのです。
しかし、これが、現実。やってみて、初めて判ること。来年もジャバマル一本で行くのか、頭を悩ましました。

ある冬の日、風呂に入りながらジャバマルを思い出していて、ふと思ったことがありました。
こんなに、整然と綺麗に蛇腹を折り曲げているのに、やっていることは、単に光を遮るだけなんだなあ。
なんだか、勿体無い。この蛇腹の折り目の一つ一つが、有効に機能するような使い方は無いだろうか。。。?
そういう目で蛇腹を見直すと、蛇腹のスリットに名刺や、ディスク(CD)を入れてみる用途を直ぐに思いつきました。
それが、シェルポ(CDケース)誕生のきっかけとなりました。

こうして、ジャバマル1年目の夏は終わり、次の年からは、同じ装置で製作できるシェルポの製造と販売に力を入れることにしたのでした。
■11■シェルポへの素早い変わり身
ジャバマルの蛇腹を大きくしたものを試作して、CDを入れてみると、驚くほど使いやすいことが、直ぐに判りました。
蛇腹が大きく開くと共に、蛇腹の間に仕切りが無い、ということが、それまでの蛇腹タイプディスクケースとの大きな違いで、ディスクの出し入れがとてもしやすく、レーベルが一目で見易くなったのです。また、ディスクを適度な力でホールドするので脱落しにくい特徴もあります。これは、この蛇腹のもって生まれた素性で、ディスクケースとしての相性が非常に良かったのです。ディスクケースとして、最初から狙って設計したわけではないので、ある意味ラッキーな偶然と言えますね。
蛇腹の折り曲げ装置を大きく改造して、サイズの違うシェルポ用の蛇腹を作れるようにしました。簡単にジャバマル用サイズに変更できないので、一冬かけて数千個分のジャバマル蛇腹を作りだめしました。

■12■蛇腹の素材
蛇腹の構造は同じでも、材質は再選定の必要が有ります。ディスクをホールドする面は不織布、外側面は紙のような、腰があるけど薄いシートを探しました。最初は不織布と紙をラミネートして独自に蛇腹用のシートを製作することも考えて、何社かに、サンプル製作を頼みましたが、仕上がりが綺麗ではなかったり、剥離したり、コストが割高だったり、、、で行き詰っていたところ、ユポ(王子製紙の合成紙)のシリーズの中に、片面不織布が貼合されているタイプのものを見つけて、これで試作したところ非常に具合良く出来上がりました。色は両面白色で、ユポである外側面をグレーに着色して使用することにしました。(後から考えると、この着色は自分の美的先入観にとらわれ過ぎていて、実は白色のままでも全然問題なかったと反省している)
その後、、何年かして3層の不織布をラミネートした腰の強いシートを見つけて、現在はこのシートを使用しています。もちろん白色のままです。
■13■外装ケースと最初のモデル
ディスクケースの収納部分は、自信作の蛇腹が出来上がり、次は外装のケースです。最初に製作したのは、0.8mm程度の一枚の厚紙を折り曲げてケースとしたもので、最小限のコンパクトさと、紙製であるエコ感を打ち出した10枚収納の小型タイプ(カートンシェルポ)でした。このとき初めてトムソン型という手法を知り、以後、私の強い切り札的加工方法となりました。当時の開発の様子は、こちらに掲載しています。
次に、取り掛かったのは、一番多く市販されている、チャック式のポーチケースに当方の蛇腹を取り付けるモデルの製作でした。この商材を扱っている貿易会社に1万個で見積もりを取ったところ、単価150円〜200円程度になり、品物はダイソー(100均)で売っているものと、同様。 私の頭の中には、ケースも当然うちのオリジナルでなければいけない。という、固定観念が有ったのですが、、、ふと、ダイソーのケースを分解してそのまま利用してもいいかも。。。と思いつき、やってみるとバッチリ!!こうして、シェルポポーチタイプは即席でできあがりました。ケースの在庫がダイソーにあると考えれば、在庫スペースも不要で、都度仕入れるので資金繰りも楽で、何よりケースの製作時間が自作タイプの1/10程度と、加工時間コストも大きく低減できたのでした。結局これまでの間に約2万個近くのCDケースをダイソーから仕入れて、シェルポのシリーズでは、一番沢山販売したモデルになりました。
■14■シェルポの評判
シェルポは、ジャバマルとは違って、大手の小売店ルートでの販売を考えずに、ネットでの販売に力を入れました。特に最初はヤフーオークションで自作のCDケースとして販売したところクチコミで広がり始め、リピートオーダーも沢山入り、どんどん売れ始め、オークションでの購入をきっかけに、カー用品店や雑貨店などからの直接取引の引き合いも多く生まれました。
ネットでの購入者からは、多くの方から直接メールでコメントをいただきました。殆どはすごく好評で、、利用者の生の声は、暗中模索に商品化をすすめている私にとってとても自信になり、方向性が間違っていなかったことを確信しました。
こうして、2002年から現在まで、主にネット直販だけで約4万個のシェルポを販売しました。
この時期、利用者に対して、一度こちらからアンケートをお願いすることが有りました。その結果は⇒
■15■チャンス?
ある程度数量が売れると、自然と色んな人の目に止まるもので、ツタヤに納入している業者からシェルポを扱いたいとか、家電量販店で並んでいるサプライメーカーからの大量注文の話があったりしたのですが、、、
一台の蛇腹折り曲げ装置で作れる数ではなく、結果的に全て断りました。もし、受けるとした場合、何台もの折り曲げ装置を製作し、その場所を確保して、人を使い、一定品質のものを作り続ける必要が有り、これでは、オリジナルグッズとはいえ、完全なディスクケース製造業になってしまうと考えたからです。時代が20年前ならそれでも飛び込んだかもしれませんが、ディスクに代わって各種のメモリーチップや大容量ハードディスクが時流となりかけていた時代でした。
でも、そこで踏み出さなかった最大の理由は、他にも、やりたいテーマ、作りたいもの、試したいコトが山ほど有ったからです。
■16■もう一つのチャンス
ある日、太陽誘電のサプライ系開発担当者から「シェルポのケースに入れてディスクを販売したい。」という電話がありました。
なんでも、同社が、市販されている様々なディスクケースを集めて社内でモニターテストしたところ、シェルポが最も評価が高かった。とのことで白羽の矢が立ったのでした。
もし、当方に蛇腹の供給力が無いのであれば、折り曲げ装置のノウハウを技術提供して欲しい、折り曲げ装置を中国で稼動させて大量生産したい。とのこと。
この話には乗りました。シェルポを多くの人に使ってもらいたいし、生産を丸ごと任せられるので手離れがいいからです。
しかし、実は、シェルポ(=ジャバマル)の蛇腹の特許は、出願後に審査請求をしておらず無効となっていたのです。
先方もこのことは事前に調査済みで、自前でシェルポ型蛇腹を製作しようとしていたのですが、どうしても低コストで作ることができず、当方に相談してきた、、、ということだったのです。
特許権は無いけど、作り方に真似のできないノウハウが有ったので技術指導料として報酬を受ける契約が結べたのでした。
2008年夏、毎月一回、福島県の工場に出向き、テーマの解決策と、折り曲げ装置のノウハウを披露しました。
もし太陽誘電がオリジナルのケースを製作を始めれば、シェルポのライバル(同じ構造だもんね)が大量に生産されることになり、しかもロイヤリティーは発生しないのですが、私はそれでも全然よし、と考えていました。理由は、前述のように、もっと色々別のことにトライしたかったからです。
翌年、日本で唯一CD DVDを製造していた太陽誘電も、低コスト化への対応が厳しくなり業務が大幅に縮小され、このプロジェクトは消えました。〜残念。
■17■デザインと機能の融合
シェルポは、文具雑貨のコーナーに置かれることもあり、デザインも重要な要素でした。幸いシェルポのカタチはこれまでに無いものだったので、注目を受けることも多く、兵庫県のグッドデザイン部門大賞にも選ばれました。
それまで、私はデザインについて考え込むことは有りませんでしたが、デザインが売れ行きを左右することを感じ始めました。
発明は、既存のカタチを根っこからひっくり返してしまう場合も多く、その結果、見たことの無いカタチのものが生まれ、それが必然性の塊であり、時として結果的に高いデザイン性を有していることが有る。というふうに感じたのです。
私にとって、デザインは、選択するものではなく、正に、生まれ出た結果です。
■18■シェルポの進化
ご購入者からのアンケートに基づいて、本棚にピッタリ納まるW-BOXタイプを製作しました。
W-BOXタイプは、ケースの素材にE段を始めて使用しました。この薄い段ボールという素材に、私の目が向くまでに、なんと時間の掛かったことか!! このあたりも含めてW-BOXタイプの開発の工程を詳しく解説したページ⇒
それから1年、、、W-BOXタイプで私が気になっていた、表面の堅牢性、耐水性、質感、を解決する方法を思いつきました。
その方法は、E段ボールに壁紙を貼り付けるというもので、後から考えると「フーン」ですが、これも立派なブレイクスルーです。このケースにアンケートで要望の多かったワンタッチで開閉できる機能を持たせた、シェルポBOXが出来上がりました。
シェルポ-BOXは、製作時間が掛かりすぎる、と言うこと以外は、非の打ち所の無いケースになりました。壁紙の柄には素敵なものが多く、あれもこれもとチョイスしていくと約50種類になってしまい、これ以上どうしても減らすことができず、大メーカーでも有り得ない程のバリエーションとなりました。これで、製作の手間が益々かかってしまいました。
更にその後、、、シェルポ-BOXは、工数のかかった側面部分を簡素化して低コスト、軽量化すると共に、蛇腹を2列セットしたワイドサイズも製作しています。
■19■シェルポ-BOXを触っていて
蛇腹を取り付ける前のシェルポ-BOXを、ケースとして結構気に入ってました。
このケースの中に何か収納できないだろうか。。。
ある時、文庫本を入れてみて、これだ!!と感じました。
硬い表紙のブックカバーなんて、それまで見たことも聞いたこともなかったからです。
■20■硬い表紙のブックカバーが無かった訳
待ってましたの試作の時間。E段で文庫本サイズのカバーを作って、普通のブックカバーのように、本とカバーを取り付けてみました。、、、本を閉じた状態でカバーとピッタリにすると、本を開くと表紙がすごく引っ張られて、破れそうになります。
逆に、本を開いた状態でカバーにピッタリにすると、表紙の根本部分で表紙がくねり、上手くカバーを閉じることができません。今までのブックカバーは、カバーが柔軟に曲がり、文庫本の表紙に寄り添うような動きをすることで、無理なくカバーとして機能していた、ということが判りました。
つまり、こういう理由で、硬い表紙のブックカバーが無かったのだから、硬い表紙と文庫本を無理なくドッキングさせることができれば、今までに無いブックカバーができるかも!! ハードルが明確になりました。
■21■無いものを作ると新しいものが出来る
文庫本の背表紙と、ブックカバーの背表紙は、本が閉じていても開いていても、ずれずに密着しています。単純に考えて、文庫本の表紙の根元部分を、カバー内側の背表紙が当たる折り返し部分に固定できればよいのです。簡単な案としては、ランドセルの肩ひものようにブックカバーの内側に紐を取り付けて、この紐が文庫本の表紙の根元を押さえつければ、良いはずです。
テストしてみると、開閉動作としては問題なく、あとは耐久性と、文庫本を繰り返し容易に着脱できるか。という点した。糸は線ですが、この線を面に変更していく、、、というところが、このアイデアの一番発明らしい点で、最終的に繰り返して折り曲げても強度が落ちないPPフィルムで、糸の代わりの部材を形成しました。(後日、このアイデアが特許として認められました。)
■22■ニッチを狙った訳ではないけども。。。
ブッククカバーはBOOKBOXという名称で、ヤフオクを中心に販売を始め、着実にリピーターが増えると同時に、ユーザーの意見を聞くことが出来ました。硬い表紙のブックカバーは、どこにもないので、初めて使ったユーザーの意見は様々で、大変参考になりました。つまり、予想はしていましたが、とても満足な人もいれば、非常に不満な人もいるのです。かっちり、几帳面な人間と、ラフで実用本位の人では、欲しがるものが全然違うもので、私のような発明家に作りやすいのは、誰もが80点と評価してくれるものではなくて、10人に1人が、95点 と評価してくれるものです。そして、こういうニッチな商品の方がネットの発達した現代では絶対的に売りやすいようです。
■23■変わり者ほど面白い
ブックボックスのコンセプトは、機能から作りこんだものではなく、上記のように「できちゃった」商品でした。なので、出来上がってから気が付くような要素も多く、これは嬉しい誤算でした。
「ショルダータイプ」 は、ブックボックスに連結金具を取り付けて、この金具にショルダーベルトやストラップを着脱できるようにしたものです。普通のブックカバーは柔軟な布地なので、カバーが引っ張られるとよれてしまいます。また、しっかりロックできる構造でないと、ページが開いてしまうので、単純には行きませんでしたが、ブックボックスでは、ごく自然にベルトを取り付けることが出来たので、本だけの為のショルダーバッグが簡単に出来上がりました。
「お風呂用タイプ」は、高透明なフィルムシートを本のページ面に折り込んだ構造で、このシートの両端をブックカバーの左右両端に取り付けた構造です。これも、形状が安定しているブックボックスならではの構造で、布地ではこのようにいきません。
動物の進化のように、特殊に分化した種は、そこから先の広がりも多様性を秘めているという感じです。
■24■ゴムベルトでマイナーチェンジ
ブックボックスの課題としてつきまとうのは、厚み方向の追従性が無いということと、幅が文庫本よりも10ミリほど大きくなってしまう、という点でした。
マグネットホックで閉じる構造の為、同部分の折り返し部材と、マグネットホックの厚みから、仕方がないのですが、一部にマグネットホック自体に拒絶反応を持つ人もおり、もう一つのタイプとして、モレスキンのようにゴムベルトで表紙を閉じるタイプも製作しました。「ブックフェイス」と名付けたこの方式だと、横幅は、145ミリ前後となり、コンパクトなサイズで、ゴムベルトはモレスキンの雰囲気で一部の文具ファンに好評です。ベルトは、開いたページを止めておけるという効果もユーザーが後から発見してくれましたが、そもそもゴムベルトというのも、従来の布地ブックカバーでは有り得ない構造でした。
形状的には、ゴムベルトのストッパーが付いた、ハードカバー本そのもので、通常のブックカバーに近くなっています。
■25■整理下手だから生まれた書類ラック
自室の発明部屋が、蛇腹折り曲げ装置とか、素材在庫の段ボールシートとか部品の山で一杯になり、まるで潜水艦のように人が通るだけのスペースとなってしまい、作業は居間のテーブルで行うようになってきました。すると周囲が散らかり始めて、特に図面とかFAX、仕様書など整理する必要がでてきました。女房の雷も手伝って、手近に有った段ボールで、簡単な箱をを作り、これを段違いに幾つか繋げて中身が見やすい書類ラックを作ったのですが、意味のない場所がやたらと丈夫だったり、ガムテープだらけで、形も不格好。何か許せない気持ちになって、何度か作り直しているうちに、ポップアップする蛇腹の構造を思いつき、一気に構造がシンプル化しました。最後まで、悩んだのはラックの下の部分。単純に垂直な面と水平な底面だと、どうしても直立させるスタンドがうまくセットできない。そこで底面もシャープなエッジにしてみると、スタンドがぴったり収まり、またラック全体が緩くカーブする精悍なデザインになり、強度もアップ。とても軽量なのでスタンドを付けずに壁に取り付けても違和感が有りませんでした。
あまりにも出来栄えが良かったので、これも商品化してしまおう。。。と考えて蛇腹のラックだから、「JAVARACK」と名付けました。
■26■デザインと機能が融合する瞬間
ジャバラックは幸運にも、その年の段ボールアイデアデザインコンテストで大賞をいただき、知名度も上がるとともに、プロダクトデザインというの仕事が再認識することになりました。これは断言できるのですが、上に記述した、「ジャバラックの底面の形状」こそが、ジャバラックに命の息を吹き込んだ。と感じています。この部分は、明らかに機能ではなくてデザインの仕事でした。でもそれが、機能にまで良い影響を及ぼしたのです。この時の感覚は忘れられません。これから私が目指していきたいモノづくりの方向が見えた気がしました。
■27■もう一つのジャバラック
商品化の次の年、ジャバラックは現ペーパーワールド社から、ジャバラックJモデルとして細部がリメイクされた商品として並行販売が始まりました。同社は、もともと段ボール箱を作る会社でしたが、デザインコンテストを主催したり、各地の段ボールアートデザイナーとコンタクトしている会社です。自分のアイデアが自分の手を離れて商品化されるのは、久しぶりのことですが、これは、いわゆる町の発明家のゴールでもあります。
しかし、販売実績としては、私が販売する数量の1/10 以下で推移しています。やはり、「私が考えた商品です」というインパクトが営業において重要だったのかもしれません。
更に、その後同社からは、B5サイズのジャバラックも販売が開始されました。
■28■ジャバラックの改良したい点
これまでの発明品と同様、ジャバラックも直販することでユーザーからご意見を頂きました。
最も要望されるのは、ポケットの横幅がA4サイズにピッタリ過ぎてA4ワイドの冊子や、クリアファイルが入りにくい。という点です。

また、個人的には、スタンドの取り付け方法を改善したい。一番下の段に重たい本を入れた場合に、長期間そのままにしておくと型崩れしてしまう場合がある。マジックテープを使わずに、組み立てられるようにしたい。などなど
木型の寿命が来たら、これらの改善点を盛り込んだ新ジャバラックを製作しようと思っています。
■29■代理店という販売ルート
沖縄の出版社からジャバラックを販売したい、、というお話をいただき、何でも試したいというポリシーに従い、お願いすることにしました。とは言っても、特約店とか、代理店とか、フランチャイズとか、何にも判らないままのスタートでした。少なくとも、沖縄は発送の際の送料が割高になってしまう、まとめて送れば、沖縄の方にも購入しやすくなるだろう、、、という漠然とした予想は有りました。実際には、担当者の方が商品を実地にセールスしてくれたおかげで、まとまった注文を受けることが出来ました。同社の出版する雑誌にも毎号デカデカと、広告掲載していただいて、沖縄は、一つのテストマーケティングのような場となっています。恐らく雑誌を見た沖縄の人から、大口の注文や、代理店希望の連絡が何度か直接舞い込むことも有りましたが、もちろん新星出版様に振りました。こういうことも一つの経験として今後に活かせるようになればいいなあ。と感謝している次第です。
■30■ジャバラックの付属品とリメイクモデル
ジャバラックユーザーや上記新星出版から頂いた要望として、A4三つ折りのリーフをすっきり収納できるサイズのものが欲しい。というものがありました。
いろいろ試行錯誤して、現行のジャバラックに差し込むだけでポケットを左右に分割して、2列にリーフを差し込める構造を思いつき、商品化しました。ジャバラックセパレーターとしてお手持ちのジャバラックに取り付けられるというのが、一番気に入っている点です。
ポストカードを専門に収納できるサイズのモデルも製作しました。ポスカラックと名付けましたが、これはまだ本格的には販売していません。木型はできているので、今後機会を見て売り出そうと思います。
■31■ジャバラックをいじくり回す
ジャバラックの蛇腹のポケットを使って再び、ディスクケースを作ってみた。各ポケットの段差を無くすと、シェルポのように、ディスクを隣接して収納することが出来ましたが、一番の違いは、蛇腹を大きく開くことが出来ないという点。従来のドキュメントファイルと同程度にしか開きませんので、使い勝手ではシェルポの足元に及びません。しかし、何かできないかと、試行錯誤していて思いついたのが、縦に伸び縮みする構造のディスクケースです。通常のディスクケースのようにCDを蛇腹ポケットに差し込み保管、携行できるのに加え、ケースひらいてフックリングをせり上げると、蛇腹のポケットが縦にズラリと伸びて、ディスクのレーベルが一目で見渡せる、とか、ケースを吊るした状態で使用できる、という特徴が生まれました。変形する様子が面白いし、機能的にも満足するレベルだったので、もっと洗練してやろう。。。と、これも一枚のシートを折り曲げて作れる構造に仕上げディスクハンガーと名付けました。
■32■ディスクハンガーの無念
ディスクハンガーは、その年に初めて出展した東京ビッグサイトでのギフトショーに間に合わせよう、、、っとトムソン型を作り、ギリギリすべり込みで商品を完成させました。が、段ボールメーカーはとても弱いスペックの段ボールを納品してきて、それをチェックできないまま商品化してしまい、私としては、とても不本意な品物が出来上がってしまいました。また、この時期すでに、ディスクウォークマンなどが急激に減ってきて、MDなどを経て、スマートメディアに移行してきたこともあり、ディスクケースは注目されなくなってきました。このダブルパンチで、私のモチベーションも下がってしまい、再び丈夫なシートで再製作する意欲が失せ、現在まで放置されたままです。









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